巻頭言

 

わが国産業力強化の先導役を!

Leading Role for Improving the Competitiveness of Japan

 

牧本 次生


   この度、エレクトロニクス実装学会の会長を務めさせていただくことになりました。微力ではありますが、本学会の安定的な発展のために努めてまいる所存であります。会員の皆さま方のご支援をよろしくお願い申し上げます。
   本学会は、1998年4月1日に旧回路実装学会(JIPC)と旧エレクトロニクス実装技術協会(SHM)の合併によって誕生し、今年で6年目を迎えております。本学会定款によれば、本会の目的は次のように要約されます。「本会はエレクトロニクス実装の技術および学術に関する諸活動を通じて、エレクトロニクス産業の発展を図り、高度情報化社会の推進に資すると共に、わが国の経済と国民生活の向上に寄与することを目的とする」。会長就任にあたり、改めてこの趣旨に思いをいたし、原点を踏まえた運営を進めてまいりたいと思います。
   さて、1970年代から80年代にかけて大躍進を遂げたわが国エレクトロニクス産業は90年代に広がったPCを中心とするデジタルの波に乗り遅れ、その競争力は急速に低下し、今日でもなお、回復への突破口を模索している状態であります。スイスの中立的研究機関であるIMDによれば、わが国の産業競争力は1992年まで世界トップに位置していましたが、93年に首位の座を米国に譲って以来下降を続け、97年には17位、2002年には30位と「地すべり的大敗」ともいえるような状況になっています。この背景にはわが国の政治、産業、教育、社会などいろいろな要因が絡み合っていますが、この傾向を反転させるには、どのような手を打つべきか? これこそわが国にとって重大な課題であります。
   そのための有力な施策としては先端的な技術を開発し、新しい産業を興し、これによって世界をリードするような「大きな波」を作り出すことだと思います。そして今日、立ち上がりつつあるデジタルコンシューマ製品群はそのような可能性を秘めております。例えば、新しいカメラ付き携帯、デジタルカメラ、ゲームマシーン、デジタルTV、カーナビなどなど、枚挙にいとまがないほどです。また、昨今のロボットブームもその先につながる新しい波の到来を髣髴とさせるものであります。このような民生新分野は、わが国が伝統的に得意としている分野であり、ここにわが国産業競争力再建の手がかりがあります。
   民生新分野の電子機器には共通して、「小さく、安く、ローパワーで、高いインテリジェンス」といったニーズがあります。実装技術は、このようなニーズを実現するための最重要技術であり、わが国産業競争力強化のための大きな潜在力を持っていると思います。本学会がそのための先導役を果たすことを心から念じている次第であります。

本会会長/ソニー 顧問
「エレクトロニクス実装学会誌(Vol.6、 No.4)」巻頭言より


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